社会福祉法人のゆり会 のしお保育園は清瀬市西部に位置し、0歳児からの未就学児童を都営住宅の一階にある保育園で、お家と同じようにゆったりと健やかに育てます。
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(2017年1月)            おーい、ゆうだいくん!

 ゆうだいくんは忍者でした。
 正確に言えば東京の西の端の市の野塩というところにある保育園にかよっていて、その保育園では皆が忍者の修行をしているクラスがありました。担任のおーさわせんせいが、元気な男の子が多いクラスをじーっと見ていて「この子たちには忍者だ!」と思った、のかどうかはわかりませんが、とにかくおでこに鉢巻をまいて園庭や散歩先で走り回っていました。もう25年近く前のことです。ゆうだいくんはその忍者組の一員でした。
 
 5月の遠足にはリュックをしょって電車で八国山に行くことになりました。鉢巻をきりりとまいて、宝物のあるところが書かれている巻物を持って、所沢で乗り換えのために降りたとき─なんと大事な巻物は車内に! 気づいて呆然としている皆の前を電車はスーッと通りすぎて行きました。

すっかり気落ちした忍者たちは地図なしで八国山を歩くことになり、「トトロがとどけてくれないかなー」とつぶやく子に「トトロなんかいねーよ!」とリアルな意見を言う子あり、集団のまとまりが欠けてきたときでした。みんなよりひと足先に道を確かめに行っていた引率のせんせいが「あそこに何かみえる」と木の根っこを指しました。おお、電車で行ってしまったはずの巻物とお菓子の「宝物」がありました。忍者たちは感激のあまり空に向かって
「トトロさーん、ありがとう!」と叫びました。「いねーよ」の子がいちばん大きな声で。

 皆さんにはもう一人の引率の人が怪しいとおわかりですね。あとでおーさわせんせいは、その人(実はわたしです)に「忍者の極意は味方をあざむくことと知りました」と述懐したものでした。

 そして今、おーさわせんせいもわたしも元気なのに、ゆうだいくんが11月に亡くなりました。まだ29歳でした。穏やかな、いつも周りの人を思いやる優しい性格で、卒園してからも忍者組の仲間たちはとても仲が良く、しょっちゅう集まっていたので、ゆうだいくんの消息も私たちに届いていました。2年半前、難しい病気になったと聞き、保育園の仲間がどんなに心配し、励まし、祈ってきたか・・。

 空に向かって「ゆうだいくーん」と呼ぶと、あの赤いほっぺの、はにかんで唇をちょっととがらせた彼が、笑いながら手を振ってくれる気がしてなりません。

Posted at 2017年01月06日 14時02分53秒

 
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