レーシングカートのシャシーとエンジンの速さを追求するページです。
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2009-10 の記事

エンジンシリンダーの...

皆さんには、日頃から多くのKTエンジンのOH依頼を頂き感謝しています。
多くの方から「エンジンが速くなった」との感想を頂き安心をしています。
けして特別なことをしているわけではありませんが、一つ違いがあるとすればそれはピストンをサイズアップする際にボーリングマシンでボーリングを行っている事かも知れません。

以前にもJK誌コラムで取り上げているテーマです。
シリンダーのボーリングあるいはホーニングで、ピストンをサイズアップしてエンジンの上周りはOHされるわけですが、ここ10年くらいの傾向として日本に輸入されたアメリカ製のSANNEN製ホーニングアタッチメントが非常な勢いで普及しました。
これが普及する以前はカートショップから多くにボーリング依頼がありましたが、今では殆どこなくなりました。全国のボーリングマシンを所有しているところでは同じような現象が起きているようです。
もちろん私も15年前ほどからSANNENを使用していますが、それはあくまでボーリングマシンでボーリング後に行うホーニングマシンでの使用になります。
地方戦が盛んな頃は、レースごとにこのアタッチメントと新品ピストンを持ち歩き、エンジンが焼きついた際には現場でドリルでホーニングを行い対処していました。
これはもちろん緊急時のことです。といいますのは、ホーニングのみでピストンサイズを上げていくとホーニングのみでは修正不可能なシリンダーの歪が発生します。
このような歪みは、私がホーニングマシンでホーニングを行ったとしても完全なる修正は不可能です。そこでボーリングにて修正を行い、その後ホーニングをするという手順になります。
レースで使用に耐えるホーニングによるサイズアップは、ボーリングでのサイズアップ後さらに1回程度と考えられます。それもボーリングマシンでのサイズアップです。
特に注意しなければならないのは、新品エンジンを使用後初回のOHの際のシリンダーの作業です。新品シリンダーは加熱を繰り返すことで信じられないほどの歪みを発生します。
時にはピストンクリアランスを上回るひずみになります。
通常であればエンジンが壊れてしまう量なのですが、そこがKTエンジンの不思議なところです。ピストンの材質が軟らかいため、その歪みに適応しピストンが減ってくれます。
タイムは遅くなりますが、壊れない理由はそれが理由です。
それでも過度に稼働時間が多くなると、時々ピストンが割れる等のトラブルが発生します。
新品時のこの歪みは稼動初期から概ね5時間で、その後シリンダーが発生するひずみの約75%になります。
私はSLOのメンテナンスの講師をやっていることは以前にもお知らせしましたが、そのテキストの中にも「新品エンジンの初回のエンジンOH時にボーリングをするか、あるいはホーニングのみでピストンのサイズアップを行うかは、勝てるエンジンになるかなれないかの違いになる」という意味合いの事を記載しました。(テキスト作成も各々の講師が担当)

歪が発生したエンジンのボーリング時の写真を載せます。



これはPRDエンジンの写真ですが、ボーリングマシンにセットした状態で撮影したものです。
ボーリングマシンはシリンダーベース面に対して垂直な穴にする機械ですが、当然のように内面の出っ張っている場所から先に削られます。
KTエンジンではこれよりももっと多くにひずみが発生しています。
ボーリング後に使うホーニング用ホーナーの一部を紹介します。



カートエンジン以外にもオートバイのエンジンの依頼もありますので、どうしても種類が必要なのですが、カートで使うのはこの中の左から2、3番目のものでこれがSANNENのアタッチメントです。皆さんもどこかで見ていることと思います。
一番右側もビックボア用のSANNENです。
これらには文字通り「石」が付いています。これはいわゆる「砥石」ですが、これの管理が大切で、歪んだシリンダーをホーニングするとこの砥石が偏磨耗してしまうため、そのままホーニングを続けるとけして精度は出なくなります。
ドリルでホーニングすることは、ショップにとってコストが安く済む等のメリットはあるのですが、「エンジンの速さ」というテーマから考えると逆に「リスク」であると考えられます。

以上説明しましたように、ボーリングでのエンジンOHはある意味「レースコストの無駄を省く」ということでも意味のあることだということを理解していただきたいと思います。


Posted at 2009年10月23日 13時20分27秒  /  コメント( 0 )